シニアのためのシェアリングエコノミー

国家というプラットホームに依存しない「個人外交」をより広げたairbnbを応援するブログです。

これからどんどん苦しくなっていくホテル業界での戦い方

 

こんにちは。

神保町にある「漫泊=一晩中マンガ体験」MANGA ART HOTEL, TOKYO®

代表の御子柴です。

 

最近増えてきた「コンセプトホテル」や「コンテンツ型ホテル」に関して思うところを書きたいと思います。

 

あらゆるビジネスは改善をすることで利益を上げていきますが、ホテルの改善というと、①集客②接客 というソフト面の改善に目が行きがちです。

①はPV ②はレビュー点数(と長い目でみたPV数)によって表面化するので改善も定量的に追えますね。

 

このように、改善はソフト面が前提です。

が、80%のゲストがホテルに対して求めているのは実はハード(立地、ホテルの機能)であることからも、ホテルの運営者サイドとして携われる部分が実は残りの20%の改善でしかありません。

そのくらい、「最初が肝心なビジネスモデル」です。

 

主なハードの改善というのは最初に決めたものを変える改善のことなので初期費用並みに掛かります。立地はもちろん変えられませんし、内装工事でも相当なコストがかかるものです。

しかし、ソフトの改善にはそこまでお金はかかりません。オペレーション変更や人の教育からの、コンテンツの改善です。

 

ですので、このソフトのPDCAを回わせるホテルを開発することこそが、これからますます厳しくなっていくホテル業界においての弱者のとるべき戦略(シェア1位以外は全て弱者の定義)です。

 

そして、(エリアを絞らない限りは)日本では年商500億を下回るような規模の企業は全て弱者な為、弱者の戦略を取るしかありません。

 

しかし、民泊をはじめとした旅館業事業者となると、供給量不足で出店するだけで簡単に利幅が取れていたために、大多数のプレイヤーが、ソフトを改善できる情緒的ベネフィットに根ざしたホテルを開発するべきであるにも関わらず、機能的ベネフィット推しのホテルを開発し、ユーザーニーズの20%しかないソフトの改善しか出来ない前提で戦うというかなりツライ状況が顕在化し始めているのがいまいまの状況なのです。

 

f:id:ilovemeziro:20191018123633j:plain

情緒的でかつブランディングも確立されている代表格の大好きな星のや軽井沢



 

・情緒的ベネフィットのホテルとは

 

弊社で運営しているMANGA ART HOTELですがオープンから8ヶ月で2回以上ご利用頂いたリピーターの人数が実数ベースで319人(全体で35ベッドのみ)と通常のホテルではありえない位のリピート数となり、訪れたゲストの国数に関しては60ヵ国を越えました。

 

これは、ホテルの持つ機能的側面ではなく、感情的なエンタメ感である情緒的なベネフィットに特化したことが要因であることは間違いありません。

(その為、大半のホテル内エリアで食事を禁止するなど、ホテルにとって重要な「機能性」を「あえて」捨てました。)

 

が、それだけでは足りずでして、ここで最も大事なことは、情緒的ベネフィットをどのようにコンテンツにしてホテルのもつ機能と融合させるか。

だと考えています。

 

このような情緒型ベネフィット推しのコンテンツ重視のホテルはパッと見増えていますが、

 

ブランディングからコンセプトからコンテンツからホテルから一貫して作り込まないとダメだよね

 

 

②コンセプトを体現できる人間が現場でゲストとコミュニケーションした前提でソフトのPDCAを回すべき

 

という二つの重要なポイントがあります。

 

まず、1つ目の話です。

 

これはもはや、ホテルとしてのコンテンツではなく、コンテンツが先に来るくらいの意識の掛け方でないとダメだと思います。

ホテルに後から要素を足しているくらいじゃ全く足りません。

つまり、そのくらいコンテンツに時間もお金もかける気概(実際の予算)でないとコンテンツにはならないのです。

そして、このコンテンツのブランドを体現する人そのものになるのは間違いなく「現場の人間」でないといけないのです。

(そしてこの現場の人は、バイトで雇った人がいきなりできるものではない為に、教育期間はオーナーレベルのブランドを体現できる人がやらないとコンテンツの質がとんがりません。)

 

ブランディングの基本として金太郎飴のようにどの要素で切り取っても同じブランドが見えることの重要性があります。(リッツであればクレドを体現できるレベルの人が接客せねばならないし、webでもそのブランドを感じられないといけないなど)

 

以上のことからも、コンテンツに特化するのであれば、ゲストと対面する人そのものがコンテンツのブランド体現者として、ゲストの目の前に在り、その価値を提供することがホテルにおいても重要であると思います。

MANGA

大英博物館 MANGA展

 

続いて、「②コンセプトを体現できる人間が現場でゲストとコミュニケーションした前提でソフトのPDCAを回すべき」の話です。

 

凝ったコンセプトではじめての試みをする場合、仮説が全て予想通りに進むことなどありえない為に、相当数の現場での改善が絶対的に必要になります。

 

コンセプトのターゲットユーザーが予想より20%少ないかもしれないし、予想以上にターゲット層以外の方が喜んでリピートしてくれるかもしれません。

突然、目当てにしていたある国の人たちが政治的な動きで来なくなるかもしれません。

 

そんな時に、「温度感を含めた現場感」が無いとコンテンツのオペレーション改善も想起されないし(通常のホテルオペレーションの変更だけなら現場で出来るが、コンテンツが絡んだ時の改善はブランド体現者が居ないと出来ない。そしてブランド体現者を育てるまでにかなりの時間がかかる。)短期的な収益をマイナスにしてでも現場の優先順位の高い事項への投資を行うべきなのは現場の一次情報が適切に上に伝わることにより決定されることなのは間違いありません。

 

そこで改善できる体制というのは、「意思決定者がゲストと関わる現場にいるか」に尽きますが、ホテルのフロントというのは通常オーナーがやる仕事ではないのがいまのホテル業界の現状です。

 

「コンセプトの体現者で且つ意思決定者」が現場にいる体制でも利益を出せるビジネスモデルというのが重要になりますが、通常のホテル業界でそれはありえません。

 

それは、今までフロント業務の寄与できる範囲が、経営の重要なKPIでなかったからです。

(運営開始前の立地確保やファイナンスに関係する機能的な部分でほとんど勝負は決まっていた為)

 

しかし、ホテルのハコとして機能的ベネフィットではない情緒的ベネフィットが優先されるコンテンツ型ホテルの場合は、現場の改善というソフト面の改善こそが最も寄与するKPIになるのです。

 

ゲストの声を聞いて、すぐに改善してオペレーションに落としていくことを継続できるレベルの人材と教育を(充分な人件費)経営側が用意出来なければ話になりません。
コンテンツ型ホテルだと、コンテンツを提供するのは現場の人ですので、この現場のPDCAのコストの比重がより高まってくる。という話になります。

 

つまり、これから苦しくなっていくホテルにおいての弱者の戦略をまとめますと、

 

①オーナー自らが接客してオーナーの「人」で売るスモールビジネス型ホテル

whatcannotbereplaced.hatenablog.com

(3年前に書いた記事に掲載しています。)

 

リピーターがある程度の母数を取れるマーケットの情緒型ベネフィット重視のコンテンツ改善前提の施設

 

③既存のOTAで集客せずに稼働5割を埋められるブランドを確立したホテル

 

が生き延びられるのではないでしょうか。

 

あとは強者の戦略を取れるホテルですね。

(こちらは1年前に書きました。)

whatcannotbereplaced.hatenablog.com

 

 

自分達自身もいつコンテンツが飽きられるか分からないので、コンテンツの改善にもっと力を入れていかないと...

また、現在700ベッドのホテル運営を行なっている弊社としても。

自戒を込めて。

 

株式会社dotの御子柴でした。

 

mangaarthotel.com

 

【マンガ新聞さんで漫画のレビュアーしてます】

www.manga-news.jp

 

Moneyfowardさんで連載開始しました】

www.google.co.jp